副腎疾患
副腎疾患
副腎は腎臓の上に左右に一つずつ存在しています。正常な副腎の大きさは数センチで、扁平で円盤状や半月状の形をしています。内部の構造は皮質と髄質という2層の構造でなっており、それぞれが別々のホルモンを分泌しています。副腎から分泌されるホルモンの異常により、副腎皮質機能低下症、クッシング症候群、原発性アルドステロン症、褐色細胞腫などがあります。
副腎皮質の細胞から過剰に副腎皮質ホルモン(ステロイドホルモン)が分泌されることにより発症します。症状は、おなか周りに脂肪がつく肥満を認めますが、手や足は細いため中心性肥満と言われます。妊娠線のような赤い線(赤色線状)がおなかに出現することがあります。顔がお月様のように丸くなる満月様顔貌、首のうしろに脂肪組織が盛り上がる水牛様肩(バッファローハンプ)を認めることもあります。高血圧や糖尿病を併発し、筋力の低下や骨が脆くなり時に骨折を引き起すことがあります。
副腎皮質の細胞からアルドステロンというホルモンが過剰に分泌することにより発症します。アルドステロンは、血液中のナトリウムを増加させることから高血圧を引き起こし、さらには動脈硬化を促進させます。アルドステロンを産生する腫瘍が明確に分かる場合とそうでない場合があります。副腎の腫瘍がアルドステロンを過剰に産生していた場合、その腫瘍を切除することにより過剰なアルドステロンが低下し、高血圧が改善する可能性があります。しかし、CTやMRIなどの画像検査では腫瘍がホルモンを過剰に産生しているかはわからないため、副腎静脈サンプリングという検査を行います。副腎から出ている唯一の静脈にカテーテルを挿入して血液を採取し、アルドステロン濃度を測定することにより、左右どちらの副腎からアルドステロンが過剰に分泌しているかを判別します。片側からアルドステロンが過剰に分泌されていることが確認できた場合、同側の副腎を切除する手術を行うこととなります。両側からアルドステロンが過剰に分泌されていた場合は内服薬で治療を行うことになります。片側からのアルドステロン分泌過剰が判明しても手術加療をご希望されない場合はお薬での治療となるため、手術加療の希望がある場合のみ副腎静脈サンプリング検査を行うのが一般的です。
副腎髄質よりカテコールアミンという血圧を上昇させるホルモンが過剰に分泌することにより発症します。副腎髄質細胞は神経細胞と同じ細胞から発生するため、副腎だけではなく副腎外の神経節に腫瘍ができる場合もあります。高血圧が主症状ですが、頭痛や発汗過多などを認めることもあります。カテコールアミンの作用により血管が過度に収縮する結果生じる症状です。交感神経が過剰に興奮することにより、体の新陳代謝が亢進して発汗がまし、高血糖を呈します。
副腎皮質ホルモンの欠落により、易疲労感、全身倦怠感、脱力感、筋力低下、体重減少、低血圧などがみられます。食欲不振、悪心・嘔吐、下痢などの消化器症状、精神症状(無気力、不安、うつ)など様々な症状が出てきますが、いずれも非特異的な症状です。下垂体からのACTH分泌低下による副腎皮質機能低下症を続発性副腎皮質機能低下症、副腎からの副腎皮質ホルモン分泌低下を原発性副腎皮質機能低下症といいます。原発性副腎皮質機能低下症の原因は、アジソン病、両側副腎切除後、癌などの悪性腫瘍の副腎転移などがあります。この場合は、血中ACTHが上昇することから色素沈着がみられ、皮膚、肘や膝などの関節部、爪床、口腔内にみられます。
副腎皮質では血液ナトリウムの保持、血圧の維持に重要な役割を果たす鉱質コルチコイド、生命維持、ストレス反応に重要な働きをする糖質コルチコイド、性発達に関係する副腎性アンドロゲンの3種類のホルモンが作られます。副腎酵素欠損症は、このステロイドホルモンを作る過程に関与する酵素やコレステロールを輸送する蛋白が先天的に欠損することで起こる病気です。