性腺疾患
性腺疾患
性分化とは、性染色体(X染色体とY染色体のことを指します)に基づき精巣や卵巣が発育し、男女それぞれに特徴的な内性器(体の中の性器)や外性器(体の外側の性器)が造られる過程をさします。この過程は多くの遺伝子によって司られ、性腺が作られるステップ、性腺が卵巣や精巣になるステップ、精巣から男性ホルモン(内・外性器を男の子に典型的な形にするホルモン)やミューラー管抑制ホルモン(子宮を退化させるホルモン)が分泌されて男の子に典型的な内・外性器が作られるステップ、卵巣からこれらのホルモンが分泌されずに女の子に典型的な内・外性器が作られるステップに分けられます。性分化疾患とは、この性分化のステップの何らかにトラブルが生じ、性染色体、性腺、内性器、外性器が非典型的である生まれつきの状態に使われる用語で、多くの疾患を含む総称です。
生まれたときに、外性器が他の大部分の男の子や女の子とは異なっている場合に、性分化疾患は疑われます。実際には、男性に近い型から女性に近い型まで様々なタイプの外性器が見られます。法律上の性(または戸籍上の性、社会的な性ともいいます)を決定するためにさらなる検査が必要な場合には、小児内分泌専門医に対応していただくのが望ましいです。
生まれたときには気づかれず、思春期後半の年齢になっても他の大部分の男の子や女の子のような二次性徴が見られない、あるいは進行が遅いことで見つかる疾患もあります。男の子で14歳になっても精巣が大きくならない場合や16歳になっても声変わりしない場合、女の子で13歳になっても乳房が発育しない場合や15歳になっても生理が来ない場合には、思春期遅発症が疑われます。
卵巣機能が低下するため無排卵となり、無月経となります。頭の視床下部、下垂体が原因となるもの、卵巣が原因となるもの、子宮が原因となるものに分けられます。ホルモン検査を行い、精査、治療を進めていきます。
精巣は内分泌機能と精子形成能を持ちますが、少なくとも一方が障害されます。集中力低下、性欲低下、精液量減少から始まり、勃起障害、髭・体毛の減少、筋力低下、女性化乳房などが生じます。頭の視床下部、下垂体が原因となるもの、精巣が原因となるものに分けられます。ホルモン検査を行い、精査、治療を進めていきます。
性分化疾患の原因となる疾患を見つけるために必要な検査は、内分泌検査(黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン、テストステロン、エストロゲン、ホルモン負荷試験など)、画像検査(卵巣や精巣の確認)、産婦人科などでの外性器異常の確認、染色体検査などがあり、必要な項目を選択して行います。また、子供の頃からの成長の記録(成長曲線)なども病気を診断するうえで大切な情報になります。
思春期年齢になっても精巣や卵巣から性ホルモンが出ず、二次性徴が始まらない場合には、男性ホルモンや女性ホルモンなどの補充が必要になります。男性では、テストステロンを注射する場合、精巣を刺激する黄体形成ホルモンや卵胞刺激ホルモンを注射する場合があります。女性では、女性ホルモン剤、黄体ホルモン剤を使用しますが、妊娠を希望する場合は黄体形成ホルモンや卵胞刺激ホルモンを使用します。