甲状腺疾患
甲状腺疾患
甲状腺疾患は、甲状腺の異常や障害によって引き起こされる病気の総称です。甲状腺疾患には、甲状腺ホルモンの分泌過剰による甲状腺機能亢進症やバセドウ病、甲状腺ホルモンの分泌低下による甲状腺機能低下症、甲状腺に炎症を起こす急性化膿性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎、慢性甲状腺炎、甲状腺が大きい単純性甲状腺腫、甲状腺に腫瘍ができる甲状腺癌、結節性甲状腺腫などがあります。
自己免疫疾患の一つで、甲状腺を刺激する抗体(TSHレセプター抗体)が、甲状腺のTSH受容体を持続的に刺激し、甲状腺機能が亢進し、血中の甲状腺ホルモンが増加します。
甲状腺内に結節(腫瘍)が存在し、その結節自身が自律的に甲状腺ホルモンを産生します。結節の数により単結節性と多結節性に分けられます。
TSHを産生する下垂体の細胞が腫瘍化して、自律的にTSHを産生する病気です。産生されたTSHが甲状腺を刺激するため、甲状腺ホルモンが過剰に作られてしまいます。
妊娠の初期に一過性におこる甲状腺機能亢進症です。胎盤から分泌されるヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)には甲状腺刺激作用があり、甲状腺を刺激して甲状腺ホルモンが作られ、一時的に甲状腺ホルモンの産生が過剰になります。妊娠中期になりhCGが低下すると甲状腺ホルモンも正常に戻ります。
原発性甲状腺機能低下症で最も多い原因は慢性甲状腺炎(橋本病)です。橋本病は自己免疫疾患の一つで、主な症状は、甲状腺全体の腫れです。大きさはほとんどわからないものから非常に大きいものまでと様々ですが、首の前の部分の不快感や圧迫感を生じることもあります。抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(抗TPO抗体)あるいは抗サイログロブリン抗体(抗Tg抗体)といった甲状腺に対する自己抗体が陽性となります。また、甲状腺機能が低下していると、上記のような症状の他に、顔面浮腫、徐脈、心肥大、うつ状態、筋力低下、脱毛(頭髪、眉毛)、皮膚乾燥、過多月経、低体温などが所見としてみとめられます。また、昆布、わかめ、めかぶ、もずく、ひじき、昆布茶、とろろ昆布、ヨウ素含有咳嗽液などのヨウ素(ヨード)が多い食品の摂取によっても甲状腺機能低下症を認めることがあります。他には、甲状腺の手術後、放射性ヨード治療後(アイソトープ治療後)、頚部の悪性腫瘍や頚部リンパ転移に対する放射線外照射療法後、先天性甲状腺機能低下症などがあります。甲状腺機能低下症は永続性である場合と一過性(一時的)である場合があります。
中枢性甲状腺機能低下症には、下垂体が原因の下垂体性甲状腺機能低下症と視床下部が原因の視床下部性甲状腺機能低下症があります。中枢性甲状腺機能低下症の原因は、脳腫瘍、下垂体腫瘍、視床下部腫瘍、頭蓋咽頭腫、胚細胞腫、ラトケのう胞、脳外傷、脳外科手術後、ラトケのう胞などの脳の病気の一つの合併症として下垂体前葉機能低下症の一症状の場合、自己免疫性下垂体炎などです。