甲状腺機能亢進症
甲状腺機能亢進症
甲状腺機能亢進症とは、体の代謝などに関わる“甲状腺ホルモン”が過剰に分泌され、甲状腺ホルモンの働きが強く出る病気の総称です。
このような症状がある方はご相談ください。
甲状腺機能亢進症は甲状腺ホルモンが多く分泌されている状態で、体の代謝が亢進します。甲状腺機能亢進症の原因には以下のようなものがあります。
通常にはないTSHレセプター抗体という物質が体にでき、甲状腺を過剰に刺激するため、甲状腺ホルモンが多量に分泌される病気です。TSHレセプター抗体ができる理由はよくわかっていません。バセドウ病は男性より女性に多く、とりわけ20~30代の女性に多くみられます。
甲状腺の中にできた腫瘍(結節)が甲状腺ホルモンを過剰に分泌する病気です。腫瘍(結節)が1つでは単結節性、たくさんあれば多結節性と呼びます。
妊娠初期に過剰に分泌されるヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)が甲状腺を刺激することで起きる状態です。治療を要さず、妊娠中期になれば改善します。
脳の下垂体にできた腫瘍がTSHを過剰に分泌することで、甲状腺が刺激され、多くの甲状腺ホルモンが体内に放出される病気です。腫瘍の確認には下垂体のMRI検査が必要です。近年はTSH産生下垂体神経内分泌腫瘍(TSH Pit-NET)と呼ばれます。
血液検査で、TSH、遊離T3(FT3)、遊離T4(FT4)、TSHレセプター抗体(TRAb)を測定します。甲状腺超音波検査で甲状腺の大きさや見え方、腫瘍などを確認します。機能性結節やバセドウ病と破壊性甲状腺炎との鑑別には甲状腺シンチグラフィを行うことがあります。下垂体の腫瘍の確認にはMRI検査を行います。
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TSH(甲状腺ホルモンが出るように刺激するホルモン)とFT3・FT4(甲状腺ホルモン)が主に測定する甲状腺ホルモンです。
また、自分が持つ抗体(自己抗体)が甲状腺に悪さをして甲状腺が壊れたり、ホルモンのバランスが崩れたりすることがあります。これらはバセドウ病や橋本病と呼ばれその原因の一つとなる自己抗体も採血で測定できます。
さらに甲状腺にしこりがある場合はサイログロブリンを測定してしこりの状況判断に用います。
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首にゼリーを塗って、プローブを当て、甲状腺の大きさやしこりなどを見ます。
エコー検査は、超音波の跳ね返りを利用しているため、安全で妊娠中でも問題なく使用できます。
甲状腺にしこりがある場合はしこりを注射器で吸引して良性か悪性かを判断する穿刺吸引細胞診という検査を行うことがあります。
今まで甲状腺の病気と診断されていない方で出産後、体調不良、抑うつやいわゆる〝産後の肥立ちが悪い〟と言われる方は甲状腺の検査をうけられることをおすすめします。
バセドウ病であればまず、甲状腺ホルモンを抑える薬を内服します。薬にはメチマゾール(メルカゾール)やプロピオチオウラシル(チウラジール、プロパジール)などの抗甲状腺薬やヨウ化カリウムなどを使用します。服薬を始めてしばらくの間は薬の量の調節や副作用のチェックが必要となるため、2週間に1度は血液検査で確認していきます。
内服での治療が難しい場合は放射線や手術による治療を行います。放射線の治療は放射性ヨードのカプセルを飲みます。治療後2~4日は乳幼児に近づかないようにし、半年間は妊娠を避ける必要があります。手術による治療では甲状腺を全てまたは部分的に切除します。
機能性結節やTSH産生下垂体腫瘍では原因となる腫瘍を摘出する手術が行われることがあります。バセドウ病の治療と同じお薬を使うこともあります。
妊娠性一過性甲状腺機能亢進症や破壊性甲状腺炎の場合は、血液検査で甲状腺ホルモンの分泌状態を確認しながら、必要に応じてバセドウ病と同じ薬で治療します。